壺齋散人の 美術批評
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アダムとエヴァ:クラナッハの官能美




アダムとエヴァも、クラナッハが好んで取り上げたテーマであり、30点ばかりが現存している。二枚の画面に別々に描かれたものと、一枚の画面に並んで描かれたものに別れるが、後者のほうがクラナッハらしさをより感じさせる。

アダムとエヴァは、人類の祖先として、そもそも裸体で描かれてきた歴史がある。クラナッハはその裸体像を、より官能的に描いて見せたわけだが、二人のうちエヴァの方に力点を置いており、アダムは添え物のように描かれることもある。

この絵の中のエヴァは、禁断の木の実を両手に持ってアダムに近づき、あたかも誘惑するかのような表情をしている。アダムは、半ば放心した顔つきでエヴァの方を見つめている。

二人の足もとには鹿とライオンが横たわり、エヴァの背後の木には蛇がまとわりつきながら、エヴァに好色な目を向けている。

見る者はここに、エロティックなものを感じるに違いない。

(1531年、板に油彩、50.4×35.5cm、ベルリン国立美術館)





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