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聖アンナと聖母子:レオナルド・ダ・ヴィンチ




「聖アンナと聖母子」の製作時期については、ダ・ヴィンチがフィレンツェに戻った直後(1503年頃)とする説と、晩年の1517年頃とする説とがある。この絵と同じような構図のカルトン画(ハーリントン・ハウス・カルトンと呼ばれる)が、1499年頃フランス王の依頼を受けて作られたことがわかっているが、この絵はその延長で描かれたのではないかとする説が有力である。ハーリントンのほうには幼児のヨハネが加えられているが、それを除けば聖アンナと聖母子の構図は両者でほとんど変らない。

聖マリアが母親のアンナの膝の上に座り、幼児キリストに手を延ばしている。キリストは子羊と戯れているが、マリアはそれを制止しようとして手を延ばしているように見える。マリアとキリストとが視線を交し合う一方で、アンナのほうはマリアの様子を伺っている、というぐあいに視線を通じて人物と絵にリズミカルな動きが生まれている。

背景の景色の描き方は、モナリザの背景や受胎告知の遠景と共通している。

この絵をめぐってはいろいろな逸話がある。その一つとして、アンナの足元に転がっている石が胎盤をあらわしたものとする説がある。アンドレ・シャステルが提唱し、日本の林達夫も言及しているところだ。林はシャステルの見解を紹介しながら、「わたしのこの画に対して抱きつづけてきたイメージがこれによって形無しにされた」と書いているのだが、筆者にはここに胎盤があるとはとても見えない。(板に油彩 168×130cm ルーヴル美術館)





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