壺齋散人の 美術批評 |
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ラッパを吹く天使:デューラー「ヨハネの黙示録」 |
七つの封印が次々と解かれた後、それぞれにラッパを持った七人の天使が登場し、ひとりずつラッパを吹き鳴らす。すると、この世界が破滅し、犯した罪を悔い改めない人間たちが殺されていく場面が語られる。 この七人の天使のラッパのうち、デューラーは第六の天使のラッパの場面を描いた。天使がラッパを吹くと、ユーフラテスのほとりにつながれていた4人の天使が解き放たれ、悔い改めぬ人間たちを次々と殺していくというものである。その部分のテクストは、次のとおりである。 「第六の天使がラッパを吹いた。すると、神の御前にある金の祭壇の四本の角から一つの声が聞こえた。その声は、ラッパを持っている第六の天使に向かってこう言った。「大きな川、ユーフラテスのほとりにつながれている四人の天使を放してやれ。」 「四人の天使は、人間の三分の一を殺すために解き放された。この天使たちは、その年、その月、その日、その時間のために用意されていたのである。 「その騎兵の数は二億、わたしはその数を聞いた。わたしは幻の中で馬とそれに乗っている者たちを見たが、その様子はこうであった。彼らは、炎、紫、および硫黄の色の胸当てを着けており、馬の頭は獅子の頭のようで、口からは火と煙と硫黄とを吐いていた。その口から吐く火と煙と硫黄、この三つの災いで人間の三分の一が殺された。馬の力は口と尾にあって、尾は蛇に似て頭があり、この頭で害を加えるのである。 「これらの災いに遭っても殺されずに残った人間は、自分の手で造ったものについて悔い改めず、なおも、悪霊どもや、金、銀、銅、石、木それぞれで造った偶像を礼拝することをやめなかった。このような偶像は、見ることも、聞くことも、歩くこともできないものである。また彼らは人を殺すこと、まじない、みだらな行い、盗みを悔い改めなかった」(日本聖書協会訳) 絵では、上部に祭壇を前にした大いなる神とラッパを吹く天使が、下部に人間たちを殺す4人の天使が描かれている。また天界から地上へ遣わされる騎兵は祭壇の下に描かれている。 この場面は、人間たちの傲慢さが神によって罰せられる次第を描いたものだ。しかし、罰せられてもなお、自分の罪を悔い改めないものがいる、といって黙示録の作者ヨハネは、人間の業の深さについてため息をついているかのようなのである。 (1497-1498年、木版画、39×28cm、カールスルーエ国立美術館) |
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