壺齋散人の 美術批評
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芝草:デューラーの水彩植物画




デューラーは植物を水彩で描いたものをいくつか残しているが、それらも動物同様非常に微細な部分まで対象を忠実に写し取っていることが特徴である。デューラー以前に、植物を独立した価値を持ったモチーフとして取り上げた画家はいなかったし、植物を描いた場合でも、デューラーほどそのリアリティにこだわった画家はいなかった。そういう意味で、この作品は美術史上ユニークな地位を占めるに値するものなのである。

この「芝草」という作品は1503年に製作されたが、この時期のデューラーは人体比例の研究に打ち込んでおり、どうすれば理想的なプロポーションの人体が描けるか、と言う課題に没頭していた。そして人体におけるプロポーションの研究は、人体以外の対象にも適用され、そこから動物や植物をも美しい形で描くという姿勢がデューラーに身についたのだと考えられる。

ここに描かれているのは、芝やイネ科の雑草、タンポポやアザミといった、どこにでもあるありふれた雑草である。それらの雑草が、十把一からげにではなく、ひとつひとつが個性を持ったユニークな存在として、敬意を以て描かれている。デューラーは植物のうちにも神の意志を感じたがゆえに、それをないがしろには描かなかったのだといえよう。

(1503年、紙に水彩とグアッシュ、41×31.5cm、ウィーン・アルベルティーナ)





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