壺齋散人の 美術批評
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ネメシス:デューラー「人体比例の研究」




1500年、デューラーは、ヴェネチア人画家ヤコポ・デ・バルバリとニュルンベルグで出会い、人体を比例図式に従って描くことについて教唆を受けた。バルバリはあまり詳しくは教えてくれなかったらしいが、デューラーは彼の言葉をヒントにして、その後人体比例の研究に打ち込む。その成果は彼の死後に、「人体比例に関する四書」と題して出版された。

この研究の直接の成果と言われる作品がいくつかある。銅版画「ネメシス」はその一つである。この女神像のプロポーションについて、デューラーは古代ローマの建築家ウィトルウィウスの比例基準に基づき、全身長と頭部の比例を8対1に設定している。

しかし、女性の理想的なプロポーションと言うには、この絵の女性は少し太りすぎかもしれない。デューラーは豊満な肉体が好きだったのだろう。

主題にとりあげられたネメシスとはギリシャ神話に出てくる女神で、「神罰の執行者」とされる。彼女の下した神罰として有名なのは、ナルシッソスに対するものである。

この女神は古来、二枚の翼をつけた姿で描かれてきた。デューらもそれに従い翼をつけている。その翼は、以前水彩画で描きとめていたブッポウソウの翼である。また右手には飾り物を持ち、両足で不安定な球に載っているが、このポーズは運命の女神フォルトゥーナを連想させる。デューラーは、神罰と運命とを一人の女神の中で一体化させたのであろうか。

また、女神の足元に広がっているパノラマ的な光景は、第一次イタリア旅行中にスケッチしたアルプスの風景を再現したものだと言われている。

(1502年頃、銅版画、33.1×22.9cm、)





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