壺齋散人の 美術批評
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東方三王の礼拝:デューラーの祭壇画




「東方三王の礼拝」は、ザクセン選帝侯フリードリヒ三世(通称賢明公)の依頼に基づき、ヴィッテンブルグ城の礼拝室のために作られた祭壇画で、今日その中央部がフィレンツェのウフィチ美術館に、翼部はミュンヘン、フランクフルト及びケルンに保存されている。

この中央画面は、誕生したイエスのもとに駆け付けた東方三王をめぐる、おなじみの構図に従っている。デューラーらしさは、背景に現れている。透視法を駆使した独特の遠近感を以て牛小屋やその背後に連なる建物群が描かれているが、パウムガルトナー祭壇画の中央画面と比べると、こちらは遥かに開放的に映る。

それは、この絵を手掛けていた当時に、デューラーがダ・ヴィンチを研究していたこととかかわりがあるのだと言われている。ダ・ヴィンチの友人であるガレアッツォ・デ・サン・セヴェリーノが、デューラーの友人ピルクハイマーのもとに滞在しており、デューラーは彼を通じてダ・ヴィンチの絵を研究したというのである。

デューラーはこの直後第二次イタリア旅行を行い、そこで色彩感豊かなローゼンクランツ祭壇画を描くのであるが、それに先立って、このように色彩感豊かな絵を描いていたことの背景には、ダ・ヴィンチの研究と言う事態があったというわけなのである。

(1504年、100×144cm、フィレンツェ、ウフィチ美術館)





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