壺齋散人の 美術批評
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ランダウアー祭壇画:デューラーの三位一体図




「三位一体の礼拝」とも呼ばれる「ランダウアー祭壇画」はニュルンベルグの富裕な商人が、自分の寄贈した病院の礼拝堂を飾る祭壇画として注文したものである。デューラーの四つの祭壇画の中では最も保存が良く、今でも鮮やかな色彩のままである。

画面上部中央に、磔刑に処せられてキリストと、その背後に父なる神が、そして神の頭上の逆アーチ状の空間に鳩が描かれているが、この鳩が聖霊であり、この三者をあわせて、「父と子と聖霊」の三位一体ということになる。三位一体は、プロテスタント諸派がことのほか重要視した思想であり、それをデューラーは視覚化するように依頼されたわけである。

画面は上下に二つないし三つに分割され、上部の三位一体の周囲には、モーゼやダヴィデ、洗礼者ヨハネのほか殉教した聖人たちが描かれ、下部には教皇や皇帝をはじめとして現世のあらゆる階層の人々が描かれている。登場人物のそれぞれは、ランダウアー家の人々をモデルにしているといわれる。その点では「ヘラー祭壇画」と同じ着想にたっている。

最下部には広々とした平原が広がり、その右端には台を前にして一人の男が立っているが、これこそデューラーその人である。題には、「ノリクムの人アルベルトゥス・デューラー、聖母御懐胎の後1511年に作れり」とラテン語で記されている。ノリクムはニュルンベルグのラテン名である。

(1511年、板に油彩、135×123cm、ウィーン、美術史博物館)





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