壺齋散人の 美術批評 |
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バラ色の服の少女:アンリ・ルソーの世界 |
ルソーの肖像画には著しい特徴がある。風景と一体となっていること、人物が正面を向いており、ほとんどの場合立っていることだ。バラ色の服の少女(Jeune fille en rose)」と題したこの絵は、その典型的なものだ。 この少女は、淡いバラ色の服を着て、森の中に立っている。足元に多くの岩が転がっており、奇異な念を抱かせるが、実はこの少女は石屋の娘なのである。石を足元に描くことでルソーは、少女の育ちを象徴的に示しているわけだ。 その足元の岩の上にいる犬と対比して、少女が異常に大きく描かれているのは、「風景の中の自画像」と同じ趣向である。少女の左手近くの葉っぱが、やはり異常に大きいのも、少女のサイズにひきずられてのことだろう。ルソーのこうした描き方が、かれの絵が幼稚だと批判される原因になった。確かに子供の絵のような稚拙さが感じられないでもない。 なお、この絵を描いたころ(1893年)に、ルソーは22年間つとめたパリ入市税関の仕事をやめ、画業に専念するようになった。 (1893年頃 カンバスに油彩 61×45.7㎝ フィラデルフィア美術館) |
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