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ポリシネル人形を持つ子供:アンリ・ルソーの世界




ルソーは子供の絵を多く描いた。アンデパンダン展の目録に乘っているものを数えると11点ある。子どもが好きだったということもあろうが、それよりも記念写真代わりに注文を受けて描いたようである。「ポリシネル人形を持つ子供」は、その代表的なもの。

「赤ん坊のお祝い」という別名もあるから、赤ん坊の誕生日かなにかのお祝いに依頼されたのかもしれない。正面を向いて立って、左手でポリシネル人形を持った赤ん坊が描かれている。ポリシネル人形というのは、道化の操り人形で、当時子供の間で流行っていたらしい。

子供は摘んだ花を入れた衣服の袖を持ち上げているので、下半身がむき出しになっている。それがまたたいしたボリュームである。子どもの性別はわからないが、おそらく性別は問題外なのだろう。

その子供の表情が、およそ子供らしくない。丸顔で目が大きいので、一応子供らしく表現しているようなのだが、その雰囲気が子供らしくないのだ。ルソーの描いた子どもたちは、みなこのように大人っぽい表情をしているのである。

(1903年 カンバスに油彩 スイス、ヴィンダートゥール美術館)




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