壺齋散人の 美術批評 |
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田舎の婚礼:アンリ・ルソーの世界 |
「田舎の婚礼(La noce)」と題されたこの絵は、アンリ・ルソーの集団肖像画の傑作である。1905年のアンデパンダン展に出展された。森の中でポーズをとっている人々は、今で言えば結婚式の記念撮影に応じているといった具合だ。 ルソーはこの絵を、実際の人物を前にして描いたわけではなく、当時出回っていたポストカードをもとに、それを換骨堕胎して構図をつくった。花嫁を前にして、六人の男女が彼女を囲むようにしてポーズをとっている。みな一様に正面を向いているのは、この手の記念撮影にはよくあることだ。 白い衣装を着た花嫁がことさらに目立つように描かれている。花婿が誰かはわからない。花嫁の右手に見えているのはルソー自身である。ルソーは茶目っ気から自分をここに入れたのであろう。 人々の表情はみな一様に厳粛さをたたえている。とくに左手の木の株に座っている人物は花嫁の祖父と思われるが、孫の結婚を喜ぶというより、神の摂理に感謝するといった面持ちだ。右手で花嫁の衣装を支えているのは祖母であろう。全体に厳粛そのものといった印象だが、手前に犬がいるおかげで、いささかユーモアを感じさせるところもある。 構図には工夫が見られる。背後の樹木が三角形の形を描いており、それが構図を安定させている。色彩的には寒色が勝っており、それが画面に厳粛な雰囲気を付け加えている。 (1905年 カンバスに油彩 163×114㎝ パリ、オルセー美術館) |
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