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異国風景―原始林の猿:アンリ・ルソーの世界




「異国風景―原始林の猿(Les singes dans la foret viêrge)」は、最晩年の異国風景シリーズのうちの一つ。熱帯のジャングルの中で果実を収集する猿たちを描いている。

猿は五匹いるが、うち四匹は茶色っぽく、一匹は灰色である。どんな種類の猿かは明らかではないが、おそらくヒヒの仲間であろう。ルソーはこれらを、動物図鑑を参考にして描いたのだろう。

猿たちが収集している果実は、柑橘類の一種らしい。形がオレンジに似ているし、樹木の枝葉も柑橘類を思わせる。柑橘類というと、温暖な気候に適していると思われがちだが、熱帯に適応する柑橘類もあるのだろうか。もしかしたら柑橘類とは異なるトロピカル・フルーツかもしれない。

中景の白い花弁が、猿に比較して異常に大きく描かれているが、対象の比例関係にこだわらないのは、ルソーのやり方である。背景の空が鮮やかなブルーで塗られているので、画面全体が引き締まってみえるし、メリハリもある。ルソーの技術がいきついた境地であろう。

(1910年 カンバスに油彩 130×162㎝ ニューヨーク、メトロポリタン美術館)




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