壺齋散人の美術批評
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ケープ・コッドの朝:ホッパーの世界




ホッパーは、ケープ・コッドの自分の別荘をモチーフにして多くの絵を描いた。「ケープ・コッドの朝(Cape Cod Morning)」と題したこの作品もその一つ。別荘の建物の出窓から、朝日の昇るさまを見つめる女性が描かれている。この女性が妻のジョーであることはいうまでもない。ホッパーはひたすら妻のジョーを描き続けたのである。

モデルの女性が朝日の昇るさまを見つめていることは、光線の角度からわかる。光線は、画面の右側からほぼ直線的に建物を照らしている。影の具合からそれが推測できるのだ。

このように光と影によって、モチーフがどんな時間帯に描かれているかが明瞭にわかる、というのがホッパーの特徴の一つだ。どんな絵でも、かならずそれが置かれた時間帯を感じさせる。それは建物の内部を描いている場合にも、言えることである。建物の内部といえども、昼の光と夜の光との間には差異があるのだ。

建物の脇には、原生林のようなものがあって、おそらくこの別荘がかなり自然を感じさせる雰囲気の中にあったことを推測させる。ホッパーほど、ワイルドな自然を愛した絵描きはいないのである。

(1950年 カンバスに油彩 86.7×101.9㎝ ワシントン、ロビ財団)



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