壺齋散人の美術批評
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二人のコメディアン:ホッパーの世界ク




ホッパーは、人生最後の作品のモチーフに、自分と妻ジョーを選び、それに「二人のコメディアン(Two Commedians)」と題した。この時ホッパーは83歳になっており、ジョーも80歳を超えていた。しかも二人とも病気だった。そのためホッパーはこの絵を描いた二年後に死に、ジョーはその翌年に死んだ。だからこの絵は、彼らにとって人生最後の総決算のようなものだった。

その総決算の作品になぜ、二人のコメディアンを選んだのか。コメディアンという言葉には、色々な意義が含まれているので、一概に決めつけるわけにはいかないが、ホッパーが自分と妻のジョーをコメディアンに見立てていたとはいえそうである。

そのコメディアンである二人が、舞台の上から観客たちを見下ろしている。二人は手に手を取り合い、観客に向かって何かを訴えかけているように見える。ホッパーは常々、ほとんどの画家は死後速やかに忘れ去られるといっていたが、自分もまたその運命に甘んじることがつらくて、どうか自分たちを忘れないでほしいと、叫びかけているのかもしれない。



ホッパーとジョーは若々しい姿で描かれ、その姿は、ピエロとピエレッタのコンビを想起させる。ピエロたちが演じるコメデイのように、自分たちの人生も一つのコメディだった。そう言いたかったのかもしれない。

(1965年 カンバスに油彩 73.7×101.6㎝ 個人蔵)



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