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ジョット・ディ・ボンドーネ:ルネサンス美術




日本では単にジョットとして知られるジョット・ディ・ボンドーネ(1267-1337)は、十三世紀末から十四世紀初期のイタリアで活躍した画家で、ルネサンス美術の先駆者といわれている。ジョットの時代のルネサンス美術を、プロト・ルネサンスというが、その最大の特徴は、人間を人間らしく描くということにあった。人間を人間らしく描くという点では、すでにギリシャ・ローマ美術にその特徴を見ることができるわけであるが、中世になると、人間の描き方はすこぶる象徴的なものになっていた。つまりリアリズムを無視したシンボリックな美術表現が支配していたのである。それを百八十度ひっくり返して、リアルな美術表現を追求したという点では、ギリシャ・ローマ時代への回帰ということもできるわけで、そのことからルネサンス美術は文芸復興の美術ともいわれた。

人間を人間らしく描くとともに、自然や建物の描き方も、なるべくリアルなものが追求された。中世の美術が、平面的で非現実的だったのに比べて、ジョットに始まるルネサンス美術は、立体的でリアルな表現を追求したのである。

ジョットの作品としては、1305年頃にパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂の為に描いた一連の装飾画が、知られている限りで、彼のもっとも早い時期のものである。これは、37場面のフレスコ画からなっており、聖母マリアとキリストの生涯がテーマである。いずれの作品も、リアルな表現に努める一方、キリストらを人間的に表現しようとする意図を読み取ることができる。

上は、37の場面のうち、東方三博士の礼拝をモチーフとしたもの。陰影によって立体的な表現に努める一方、不完全ながらも遠近法を意識しながら、画面に奥行きを与えている。モチーフである東方三博士の礼拝は、キリスト誕生にまつわる福音書の記述から取材されている。西洋美術では、もっともポピュラーな画題のひとつである。(壁にフレスコ画 200×180㎝)



これは、1310年頃に、フィレンツェのオニサンティ教会の祭壇画として造られたもので、「荘厳の聖母」と呼ばれている。ジョットの制作した唯一の板絵である。キリストを膝の上に抱きかかえる聖母マリアと、それを見守る一団の人々が描かれているが、人物描写はいづれもリアルである。(板にパステル画 325×204㎝ ウフィチ美術館)



これは、「聖フランシスコの嘆き」といって、バルディ礼拝堂を飾る壁画群のうちの一つの場面。場面はすべてで七つからなり、聖者フランシスコの生涯をテーマにしている。





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