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アンドレア・デル・カスターニョ:ルネサンス美術




アンドレア・デル・カスターニョ(Andrea del Castagno 1419-1457)は、フィレンツェ郊外の村カスターニョ・ダンドレアに生まれた。彼の呼び名は、生地の名前から来ているらしい。もっとも生前は、アンギアーリの戦いで絞首刑にされた市民を描いたことで、首くくりのアンドレア(Andrea degli Impiccati)と呼ばれたようだ。

マサッチオの画風に強く影響を受けている。一点透視法にもとづく遠近感の表現と、リアルな人物表現が持ち味である。マサッチオの影響は、フィリッポ・リッピを通じてのものだという説もあるが、確証はない。

カスターニョの代表作は、フィレンツェのサンタ・ポローニア修道院の食堂の壁に描かれたフレスコ画「最後の晩餐」(上の写真)である。この作品は、マサッチオの「貢ぎの銭」を手本にしている。すなわち、一点透視法に基づく背景の描き方及び、現実の窓の光を利用した陰影の表現である。この絵の場合には、現実の窓は絵の右側にあるが、絵の中の窓も画面の右端にあって、絵の中の光と現実の光が一体化するように描かれている。

手前に一人孤立している男はユダ。ユダはキリストからパンを渡されたばかりだが、頭上に光輪はない。そのかわりに、頭上に描かれた赤と黒の不気味なオブジェが覆いかぶさって見える。これは悪魔をあらわしたという見方もある。(1447年頃 453×975㎝ フィレンツェ、サンタ・ポローニア修道院)



これは、「聖ヒエロニムスと二人の聖女をともなう三位一体」。三位一体とは父と子と精霊をさし、絵の中では上方にそれらしいものが描かれ、その下に聖ヒエロニムスと二人の聖女が描かれている。この組み合わせが、何を典拠としているのか、よくわからない。(1453年頃 フィレンツェ、サンティッシマ・アヌンツィアータ聖堂)



これは、「ニッコロ・ダ・トレンティーノ騎馬像」。ニッコロ・ダ・トレンティーノ騎は、フィレンツェの傭兵隊長として、サン・ロマーノの戦いを勝利に導いた。このフレスコ画は、彼への感謝を表したものである。(1456年 フィレンツェ、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)





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