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コレッジオ:ルネサンス美術




コレッジオ(Correggio 1489?-1534)は、北部イタリアのモデナ近くの村コレッジオで生まれ、主にパルマで活躍した。コレッジオとは生地にもとづくあだ名で、本名はアントニオ・アレグリという。少年時代、マントーヴァの画家マンテーニャのもとで学んだらしい。初期のかれの作品には、マンテーニャの強い影響が指摘される。

1519年頃パルマに移り、同地の協会のために宗教画を作成する一方、ギリシャ神話に題材をとった官能的な絵も描いた。かれの画家としての名を今日まで持続させているのは、エロチックな作品群である。コレッジオの画風は、強い明暗対比と鮮やかな色彩感覚で、後のバロックの先駆けとしての位置づけもされている。

上の絵は、「聖ヒエロニムスのいる聖母」。パルマのサン・アントニオ聖堂の祭壇画として描かれたものである。聖母子のほかに、聖ヒエロニムスやマグダラのマリアを配しているが、マグダラのマリアはともかく、聖ヒエロニムスは違う時代の人であり、この組み合わせは史実としてはありえない。その聖ヒエロニムスの足元にライオンを配しているが、ライオンは聖ヒエロニムスの兆票のようなものとして受け取られていた。

この絵は、「昼」と別称される。同じ寺院に「夜」と呼ばれる作品「羊飼いの礼拝」があって、両者で一対になっている。(1527年 板に油彩 205×141㎝ パルマ、国立美術館)



これは、「レダと白鳥」。マントーヴァ公フェデリコ・ゴンザーガが皇帝カール五世の戴冠式を祝うために依頼してきた神話画シリーズ「神々の愛」の一つである。ユピテルが白鳥に化けてレダに近づき、愛を交わすというギリシャ神話に取材している。白鳥はレダの股間に体を入れ、あたかも交合しているような印象を与える。これが猥褻だと受けとめたものがいて、レダの顔の部分が棄損されたこともあったという。(1531年頃 カンバスに油彩 152×191㎝ ベルリン、国立美術館)



これは、「ダナエ」。これも「神々の愛」シリーズの一点。ダナエはティツィアーノも何点か描いているが、これはティツォアーノほどエロチックさは感じさせない。ダナエのもとに、鳥に化けたユピテルがダナエの衣を剥がそうとしているところを描いているが、ユピテルはなぜか上を向いている。それは天井から降って来る黄金の雨を見上げているのだと解釈されている。右下の二人のプットは、その黄金の雨を手に取って舐めようとするところだ。(1531年頃 カンバスに油彩 161×193㎝ ローマ、ボルゲーゼ美術館)





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