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ジュゼッペ・アルチンボルド:ルネサンス美術




ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo 1526 - 1593)は、ルネサンス後期のマニエリズムを代表する画家である。ミラノの画家の息子として生まれ、若い頃には教会のための宗教的な作品を手掛けたが、三十代半ばでウィーンの宮廷画家となり、フェルディナント一世以下三人の王に仕えた。彼の作品としては、風変わりな人物画が有名で、それらはある種の隠し絵として、多くのファンを持っている。

アルチンボルドの作品のなかで最も有名なのは、四季と題する連作画である。上の絵はそのうちの「春」と呼ばれる作品。一見してわかるとおり、花の模様で人物を表現した隠し絵である。花は題名に相応しい春の花からなり、その数は80種類に上る。また鼻の形は茄子であしらっている。アルチンボルドの絵の特徴がもっともよく現われた作品だ。マクシミリアン二世(フェルディナント一世の子)がザクセン選帝侯アウグストに進呈することを目的に依頼したものである。(1573年 カンバスに油彩 76.0×63.5㎝ パリ、ルーヴル美術館)



これは、「司書」。比較的早い時期の作品で、四季の連作に比べるとずっとシンプルな表現である。これはウィーンの王立図書館の司書ヴォルフガング・ラツィウスをモデルに描いたものだというが、司書らしく書物の寄せ絵として人物を表現している。パラパラと本をめくったさまで頭髪を現わしたり、カーテンの一部を衣装に援用したりと、それなりの工夫が見られる。なお、この絵は現在スウェーデンにあるが、それにはワケがある。スウェーデンは17世紀の中頃ウィーンを占領したことがあったが、その際に、宮廷で保存していた絵を多数持ち去ったという。そのひとつにこの絵も含まれていたのである。(1566年 カンバスに油彩 97×71㎝ スウェーデン、スコークロステル城)



これは、「ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ二世」。横顔が多いアルチンボルドの肖像画としてはめずらしく、正面を向いている。この絵の場合には、数多くの野菜や花を組み合わせて人物を表現している。モデルはルドルフ二世だが、彼が扮しているウェルトゥムヌスとは果樹と果物の神である。つまり、絵そのものがウェルトゥムヌスの姿だといっているわけである。この肖像画をルドルフ二世は非常に気に入り、ご褒美としてアルチンボルドに貴族の称号を与えたそうだ。(1591年 カンバスに油彩 70×58㎝ スウェーデン、スコークロステル城)

アルチンボルドの作品は一目見たら忘れられないほどのインパクトがある。西洋の美術史上極めて異色の存在である。





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