壺齋散人の美術批評
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演習:ボナール




「演習(L'exercice)」と題されたこの作品は、軍隊の演習をモチーフにしたもの。ボナールがどういった動機から、軍事演習を描く気になったか、よくわからない。小品であるし、ちょっとした気まぐれから描く気になったのだろうか。

この絵を描いた頃のフランス軍は、ブーランジェ将軍事件などが起きて、規律がゆるんでおり、国民の信頼も薄かった。そんな軍隊を、ボナールが積極的に支持していたとは思えないが、この絵の中の軍人たちは、そんなに否定的な視線にさらされているわけでもなさそうだ。

画面奥に、一列横隊の軍人たちが並び、手前にはかれらと交代するらしい軍人たちが描かれている。交代組の先頭を歩く軍人は下士官かなにからしいが、後ろを振りかえったその表情は、あまり勇ましくも見えない。フランス軍は、ナポレオンの時代にはそれなりに強かったが、フランス人独特の個人主義が蔓延するようになると、次第に弱くなっていった。

(1890年 カンバスに油彩 23×31㎝ 個人蔵)



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