壺齋散人の美術批評
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桟敷席:ボナールの色彩世界




「桟敷席(La Loge)」と題されたこの作品は、画商アレクサンドル・ベルネームの依頼を受けて制作したもの。ベルネームは、ボナールに家族の肖像画を複数依頼したのだったが、これはそのうちの一点。ベルネームの妻と二人の息子、それに従妹の女性がモデルである。

場所は、パリ・オペラ座の桟敷席、これから舞台の幕が上がるのであろう。人物たちはまだ、舞台のほうに集中していない。右手の女性だけが、熱心な目つきをしているが、この女性はベルネームの従妹。左手のもう一人の女性が妻のシュザンヌ。二人の男は息子たちである。

この絵は、赤系統の色をきかせて、華やかな雰囲気を演出している。その赤系統に対比して、黒やブルーを効果的に配している。この絵が、色彩を主にしてフォルムを従にしているのは、立っている男の顔の上部が省かれていることにあらわれている。

(1905年 カンバスに油彩 91×120㎝ パリ、オルセー美術館)



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