壺齋散人の美術批評
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ヴェルノンのテラスのマルト:ボナールの風景画




ボナールは1912年に南仏のヴェルノンに小さな家を買って以来、そこをアトリエ代わりにして多くの作品を手掛けた。その大部分は、内妻のマルトをモデルに、周囲の美しい自然を描いたものだ。「ヴェルノンのテラスのマルト(Marthe sur la terrasse à Vernon)」と題されたこの絵もその一つ。

遠景に地中海を望む美しい自然をバックにして、マルトがテラスにくつろいでいる様子を描いている。マルトは、腰を横ざまにして座り、画家のほうを見つめている。観客もまた彼女の視線の先にあるので、われわれは彼女とくつろいだ雰囲気を共有しているような気分になる。

色彩的には、ブルーからグリーンにかけての寒色主体でまとめられており、ところどころ淡いオレンジ系の色がアクセントを添えている。その頃の暖色主体の画風とは、また一風変わった雰囲気を感じさせる作品である。

(1923年 カンバスに油彩 120×105㎝ 個人蔵)



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