壺齋散人の美術批評
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果物籠と皿:ボナールの静物画




最晩年のボナールは、果物をモチーフにした静物画を多く手掛けた。いづれも鮮やかな色彩が持ち味である。果物は、バスケットや皿にもられており、それ自体をむき出しにさらけだすようなことはない。「果物籠と皿(Corbeille et assiette de fruits sur la nappe à carreaux rouges)」と題されたこの絵は、ボナール最晩年の静物画を代表するものである。

原題にあるとおり、果物籠と皿は赤い市松模様のテーブルクロスの上に置かれている。市松模様は、ジャポニズム趣味の若年の頃から、かれの愛好したパターンだ。このテーブルクロスを載せているテーブル自体も赤く塗られているので、全体として派手な印象の絵になっている。

構図に工夫がある。バスケット、皿、小壺といったアイテムは、斜め上からの視線から描かれているのにたいして、テーブルとテーブルクロスは真上からの視線で描かれている。セザンヌの複数の視線の交差を思わせる。

(1939年 カンバスに油彩 58×58㎝ シカゴ美術院)



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