壺齋散人の 美術批評
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日曜日:シャガールの恋人たち




「日曜日」と題するこの絵(1954年)も、シャガールとヴァヴァとをテーマにしたものだ。右上にシャガールとヴァヴァの顔が一体的に描かれ、その左上にヴィテブスクらしき家並みが、下のほうにパリの街景が描かれている。見ようによっては、ロシアから来た男女が、合体して太陽となり、パリの街を照らしている、と見えなくもない。

この絵は、色彩の使い方に特徴がある。パリの街景が曖昧な色遣いで描かれている一方、その背景となるべき部分は、黄色やオレンジの原色で塗りつぶされている。かと思えば、シャガールの顔の半分はグリーンで塗られ、ヴァヴァの髪の色は白っぽく塗られている(実際には黒髪だった。ユダヤ人の髪は普通黒いのである)

この時期のシャガールは、色彩の使い方の実験をしていたようなので、その努力の痕跡がこういう形で現れているのだろう。この絵は、明るい画面にしようとするシャガールの意図が伝わってくるようでもあるが、それにしては、ノートルダム始めパリの街景が曖昧な色調になっているところが、不調和な印象を与えるのではないか。

(1954年、キャンバスに油彩、173×149cm、パリ、国立近代美術館)





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