壺齋散人の 美術批評 |
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タンジールの狂信徒たち:ドラクロアの世界 |
「タンジールの狂信徒たち(Les convulsionnaires de Tanger)」と題するこの絵も、モロッコ滞在中に実見した光景を描いたもの。タンジールは、フランス語ではタンジェといい、ジブラルタル海峡に面した港町である。ドラクロアが随従したモルネー伯爵の一行は、この町に寄港した後内陸部へ向かった。だからこの絵は、寄港後間もない頃に実見した光景を描いたと思われる。 狂信徒とはおそらく、イスラムの過激派をさすのであろう。17世紀に、シディ・モハメド・ベン・アイサによって結成された分派らしい。その過激派の人々が、熱狂しながら町を練り歩く光景を描く。人々の表情には、エクスタシーを読み取ることができる。 なお、周囲の建物の屋上には別のタイプの人々がいて、熱狂する人々を不安そうに眺めているように見える。これらの人々はユダヤ人らしい。 明るい空を背景にして、画面左上から陽光が照り付けている。陽光の当たった部分はまぶしいほど明るく、それが画面下部の集団と著しい明暗対比をもたらしているが、バロック絵画ほど強烈な対比ではない。「タイユブールの戦い」同様、大勢の人々が微細に表現されている。 (1837年 カンバスに油彩 98.1×131.5cm ミネアポリス美術館) |
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