壺齋散人の 美術批評 |
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アビドスの花嫁:ドラクロアの世界 |
![]() 「アビドスの花嫁(La fiancée d'Abydos)」と題したこの絵は、バイロンの有名な長編詩に取材したもの。ドラクロアはこのテーマを気に入っていたようで、繰り返し描いている。 原作はトルコの王朝を舞台にしている。王ジャフィールには息子のセリムと娘のズレイカがいたが、この二人が深く愛し合ってしまった。それをジャフィールは許さず、息子を追放同然の処分にするのだが、セリムはあきらめきれない。セリムはまた、従者から自分の生い立ちにかかわる話を聞く。実の父親がジャリフによって殺され、自分はその養子となって育てられたという内容だ。セリムはその話をズレイカに聞かせ、自分たちは従兄妹同士だから結婚できるという。 しかしジャリフは二人の結婚を認めず、しかもセリムを殺してしまう。絶望したズレイカもセリムの後を追って死ぬというような筋書きである。 絵は、原作のどこに取材したのか、原作を読んでいない小生にはわからない。女と男が争っている場面からして、女がズレイカとわかる。だが男のほうは誰か。セリムではないだろう。おそらくジャフィールか、その意を受けた従者だと思われる。海辺の洞窟を舞台にして、ドラマチックな光景が展開しているわけだ。ドラクロアのドラマチック好みの、よい例だと思う。 (1843年 カンバスの油彩 35.5×27.5cm パリ、ルーヴル美術館) |
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