壺齋散人の美術批評 |
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狂人のいる庭 ゴヤの風俗画 |
ゴヤは、1792年に重病を患い、聴覚を失ってしまった。かれにとってはショッキングな出来事で、深刻な鬱状態に見舞われたようだ。絵画制作の注文を受ける余裕もなくなったほどである。そんな折に、自分自身への慰めのために小品をいくつか描いている。「狂人のいる庭( Corral de locos)」と題する作品はその一つである。 モチーフは、少年時代に住んでいたサラゴーサでの体験に基づく。おそらく精神病院を訪ねたことがあったのだろう。その施設の中庭に、あきらかに狂人とわかる男女たちが、群れ集っている。中には全裸のものもいる。これだけ鮮明に覚えているということは、かれにとってはかなり強烈な体験だったと思われる。 一見してわかるとおり、非常に暗い画面である。それまでのゴヤは、暗い背景のなかからモチーフを浮かび上がらせるように描いていたが、この絵は、画面全体が暗い。人物も暗く描かれている。 この絵には、後にゴヤが版画の中で展開する社会批判の精神が現れているとする見方もある。 (1794年 ブリキ板に油彩 43.8×32.7㎝ ダラス、メドウズ博物館) |
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