壺齋散人の美術批評 |
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マハとセレスティーナ ゴヤの風俗画 |
「マハとセレスティーナ(Maja y celestina)」と題されるこの作品は、「バルコニーのマハたち」と対をなすもの。ゴヤの財産目録の中に、「バルコニーの若い女性を描いた2枚の絵」とされるものがあることからわかる。どちらも、売ることは考えておらず、自分自身の気晴らしのために描いたものであり、マドリードにあったかれの家の一室を飾っていた。 バルコニーが何の比喩なのか、色々解釈がある。バルニコーから通行人を眺めている構図は、娼婦を想起させるかもしれない。じっさい、この絵の中のセレスティーナは、売春宿の女衒を思わせないでもない。 この絵が制作されたと思われる時期は、ナポレオンの侵攻とそれへのスペイン人の反攻という激動の時代であり、ゴヤも従来のような制作姿勢をとるわけにはいかなかった。社会の混乱への批判的な視線が生まれ、それが社会風刺をモチーフにした版画の制作へつながる一方、油彩画のほうでは、風俗画への傾斜をもたらした。 この絵は、肖像画というよりは、風俗画といってよいのではないか。 (1808年頃 カンバスに油彩 166×108㎝ 個人蔵) |
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