壺齋散人の美術批評 |
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鰯の埋葬 ゴヤの風俗画 |
「鰯の埋葬( El entierro de la sardina)」と呼ばれるこの絵は、マドリード地方の民衆の風習をテーマにした作品。謝肉祭の最後の日(灰の水曜日)に、マドリードの市民は仮面をつけ、いわしをくくりつけた藁人形をかつぎながら練り歩き、郊外でその鰯を火あぶりにする習慣があった。この絵は、その行事に興じる民衆の姿を描いている。 画面の中央には、モックキングの顔を大きく描いた旗竿が担がれる様子が描かれている。肝心な鰯をくくりつけた藁人形は見えない。画面の外にはみでているのか、それとももともとないのか。しかしないのはおかしい。それでは鰯の埋葬にはならないからだ。 白い衣装の二人の女を、大勢の人々がとりかこみ、踊ったり見物したりしている。マスクをつけているものも、つけていないものみいる。二人の女はおそらく付けているのであろう。この女たちをはじめ、民衆ははでに身体を動かしており、非常な躍動感を感じさせる。 後年の傑作群「黒い絵」を暗示させる作品である。 (1810年代 板に油彩 83×62㎝ マドリード、王立サン・フェルナンド美術アカデミー) |
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