壺齋散人の 美術批評 |
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ローラ・ド・ヴァランス:マネ |
ローラ・ド・ヴァランスは舞踏団カンブルービ一座のプリマドンナである。マネは一座の支配人と懇意だったらしく、アルフレッド・ステヴァンスのアトリエに一座の連中を連れてきて、ポーズを取らせてくれと頼んだ。支配人はそれに答えてローラをアトリエに連れて行き、マネの前でポーズを取らせた。そうして出来上がったのがこの絵である。マネはこの絵を、1863年に催した自分の個展に出展した。 ローラはステヴァンスのアトリエでポーズをとったのだったが、マネは彼女を現実の舞台の上にいると想定してこの絵を描いた。彼女は舞台の袖に立って、これから観客の前に姿を見せようと構えているのである。彼女の衣装はエクゾティックな雰囲気を漂わせているが、それ以上に彼女自身がエクゾティックな顔立ちである。 その彼女が衣装も含めて詳細に描きこまれているのに対して、背景のほうはざっくりと描かれている。とくに、右端の観客席は、それとわからないほど大雑把な描き方だ。こういう描き方は、当時の基準から言えば、手を抜いた中途半端なやり方と受け取られた。 この絵に理解を示したのは、美術界ではなく、ボードレールを始め文学者たちだった。とくにボードレールは、大いに褒めてくれた。彼もまたカンブルービ一座のファンで、その公演を頻繁に見に行ったそうだ。ともあれボードレールは、次のような四行詩を作って、マネによるローラの美しさの表現をたたえた。 いたるところ逢うことのできるかくも多くの美女の間に 欲望のゆれ迷うことは、友らよ、私も理解する さあれ、みたまえ、ローラ・ド・ヴァランスのうちに閃く 薔薇色と黒の宝石の、思いもかけぬ魅惑を(阿部良雄訳) (1862年 カンバスに油彩 123×92㎝ パリ、オルセー美術館) |
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