壺齋散人の 美術批評 |
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アルジャントゥイユ:マネ |
「アルジャントゥイユ」と題したこの絵も、屋外での作業の成果だろう。画面の明るさがそれを物語っている。だがこの絵も、「ボートのアトリエで描くモネ」同様、光の効果にはあまり注意を払っていない。その結果画面構成がかなり平板になっている。前景の二人の人物と彼らの背後にあるものとが、同じ平面にあるかのごとく、全体に平板さを感じさせる。 マネはこの絵を1875年のサロンに出展したが、批評家たちからは散々悪口を書かれた。風刺家のストップなどは、この絵を評する次のようなキャプションをつけたほどだ。 「まあ! これはなんですか?」 「マネとマネットのカップルですよ」 「二人はなにをしているんですか?」 「船に乗っているのだと思います」 「でも、この青い壁は?」 「セーヌ川ですよ」 「たしかですか?」 「もちろん、私はそう聞きましたよ」(遠藤ゆかり訳) これは、この絵の平板さをからかったものなのである。なお、モデルの男性はマネの義弟ルドルフ・レーンホフ、女性は不明。この女性も、「鉄道」の中の女性同様、周囲に全く無関心な態度を装っている。 (1874年 カンバスに油彩 149×131㎝ トゥールネー美術館) |
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