壺齋散人の 美術批評 |
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散歩(La Promenade):モネ |
妻カミーユと息子のジャンをモデルにしたこの作品「散歩(La Promenade)」は、モネの前半生を飾る傑作といえる。モネはこの絵を、アルジャントゥイユの草原にイーゼルを立てながら、眼に入る光景を直接キャンバスに表現したのだったが、その光景は、刻々動く光と、ざわめく風とがうつろう壊れやすい眺めだった。その壊れやすい一瞬の眺めを、モネはキャンバスに定着させることで、そこに永遠へのつながりを見ようとしたのではなかったか。 この絵がモネの代表作というにふさわしい理由はいくつかある。一つは、モネが生涯の前半生の画業で固執していた風景と人物との一体化ということや、自然のなかにあふれる光の動きをそのままに表現しようと試みている点や、あるいは色彩の装飾的効果といったものが、この絵の中では渾然と融和している。 色彩の面でいうと、この絵では白が効果的に使われており、それがあたかも風のざわめきを運んでくるような効果を上げている。風のざわめきはまた、草の動きからも伝わって来るようである。というわけでこの絵は、光と空気の動きをそのまま画面に移したような感覚的な印象を与える。 これは日傘を持った女の部分を拡大したもの。女の顔をなでるようにして通り過ぎる風の動きが、白い絵具で巧妙に表現されている。 (1875年 カンバスに油彩 100×81㎝ ワシントン、ナショナル・ギャラリー) |
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