壺齋散人の 美術批評 |
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果物と花:ミュシャの世界 |
この一対の絵は、モチーフ設定や構図・色合いに共通するところがあるので、連作として作られたと思われがちだが、もともとは別の作品として制作された。しかし市場では、これらを一対のものとして受容したために、事後的にセットものとして認知された。 果物と花という、関連の深いモチーフを、同じような手法で表現している。どちらも女性の上半身を前景に出し、その女性にモチーフの花と果物を絡ませている。ミュシャの作品の特徴である過剰な装飾は省かれ、わずかに上段左右に三角形の控えめな模様を配した程度だ。 上は果物のモチーフ。梨やブドウなど、豊かな果実の恵みを女性が両腕いっぱい抱えている。果実の豊饒さに見合うように、女性の体つきも豊満に描かれている。その表情には、「わたしを熟した果実として受け取ってください」といった、挑発的な雰囲気が感じられる。 こちらは、花のモチーフ。女性は白ユリのほかさまざまな花を抱え、また髪にも飾っているが、その表情はなぜか、倦怠のようなものを感じさせる。 (1897年 紙にリトグラフ 各66.2×44.4㎝) |
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