壺齋散人の 美術批評 |
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月と星:ミュシャの世界 |
「月と星」は、ミュシャの装飾パネル・シリーズの最後の作品(四枚セット)。ほかの一連のシリーズものと同様、モチーフを女性に擬人化している。もっとも、ほかの作品では、女性が前面に浮かび上がるよう配置されているが、このシリーズの女性たちは控えめに描かれている。その分、モチーフの月と星を強調している。 四点とも暗い印象を与える画面なのは、ミュシャとしてはめずらしく、精神的な要素を持ち込んだからだといわれる。画面を暗くすることがなぜ精神性の表現につながるのか、いまひとつはっきりしないが、ミュシャの心の中では密接に結びついていたのであろう。 左側は「宵の明星」、右側は「月」である。「宵の明星」の女性は、斜め後ろを向いて、観客の目を避けようとしているように見える。その女性の背後に、星が光を放ち、女性の姿を照らし出している。カメラの資格でいえば、逆光の構図だ。 「月」の中の女性は、新月を背景にして、淡い光のなかに浮き出たように描かれている。こちらは観客のほうへ正面を向けているが、裸体は衣で隠している。 (1902年 紙にリトグラフ 各79,0×30.5㎝) |
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