壺齋散人の 美術批評 |
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パテシバ:レンブラント |
パテシバにまつわる話は、旧約聖書の「サムエル記」に出て来る。パテシバは、ヒッタイト人ウリアの妻であったが、ユダヤのダヴィデが彼女を見初めて強引にセックスした。その結果パテシバは妊娠したのだが、ダヴィデは己の罪を隠そうとして、ウリアを亡き者にしようと画策する。すなわち戦場に赴かせ、味方の軍人に殺すよう命じるのである。 この絵は、ダヴィデから寄こされた手紙を手にしながら、水浴するパテシバを描いたもの。パテシバは、ダヴィデの手紙を右手で無造作にもち、差し出した足を老婆に洗わせている。その表情には、どこか悲しげな、とほうにくれたような憂いが浮かんでいる。なにかを後悔しているかのような。それとも、夫が死んだことを知らされて、嘆いているのだろうか。 悲しみの表情を浮かべているにかかわらず、パテシバの体は豊満そのもので、全体として官能的な雰囲気さえ感じられる。それは、ベネチア風の色彩がもたらす効果だともいわれる。レンブラントの裸体画の中では、もっとも高く評価されているものだ。 (1954年 カンバスに油彩 142×142㎝ ルーヴル美術館) |
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