壺齋散人の 美術批評 |
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舟遊びする人々の昼食:ルノワールの世界 |
1879年頃から、ルノワールは再びセーヌ河畔を訪れ、舟遊びする人々を描くようになった。「舟遊びする人々の昼食(Le déjeuner des canotiers)」と題したこの作品は、代表的なもの。パリ近郊のシャトゥーにある島のレストラン、フルネーズを舞台にして、そこのテラスで昼食をとる人々を描いている。 左手の、犬と戯れている女性は後にルノワールの妻となるアリーヌ・シャルゴ。彼女の背後で手すりに寄り掛かっている髭の男は店主アルフォンス・フルネーズ。画面右手に、麦わら帽子の男に話しかけている女性は、女優エレーヌ・アンドレ、画面やや奥の、手すりに身を寄せかけている若い女は、経営者の娘アルフォンシーヌだといわれる。 全体として明るい雰囲気の作品で、光の処理もそつがない。人物の表情も生き生きしている。また、手前のテーブルの上に乗ったアイテムも、ルノワールとしてはめずらしく、一つ一つ丁寧に描かれている。特にワインボトルやグラスの描き方が、現物を思わせるような存在感を示している。 この作品は、ルノワールの印象主義的作風を大成したようなところがあり、また、モチーフの描き方には、リアルさの追求が見られるという点で、ルノワールにとっての一つの転換を予想させるものだ。 これは、アリーヌの部分を拡大したもの。華やかな飾りのついた帽子をかぶり、犬を両手で抱いて、話しかけているように見える。そのとがらせた唇に愛嬌がある。 ルノワールはこの大作の完成に、かなりの時間をかけ、第七回印象派展に出展した。当時ルノワールのパトロン的存在だったデュラン・リュエルが大金で買ってくれた。 (1881年、カンバスに油彩 129.5×172.7㎝ ワシントン、フィリップス・コレクション) |
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