壺齋散人の 美術批評 |
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髪を結う浴女:ルノワールの世界 |
ルノワールは意識して印象派から脱却しようとし、新たな画風を模索したが、1883年頃には、ある種のスランプに陥ってしまった。その頃の手紙の中で、自分には絵も描けなければ、デッサンも描けないといって、嘆いて見せた。一応、アングルを目標とはしていた。イタリアで古典主義の魅力に目覚めたルノワールにとって、アングルはフランスの古典主義を代表する画家に思われたからだ。 「髪を結う浴女(Baigneuse arrangeant ses cheveux)」と題したこの作品は、1885年のものだが、アングルの影響が感じられる。背景の描き方こそぞんざいだが、モデルの女性の描き方は、アングルを意識したものだ。ラインを明確にし、光沢のある色彩で肌を描いているところなのだ。 背景の描き方にしても、それ以前の、写実的な描き方とはかなり異なっている。浴女とあるとおり、これは水辺なのだろうが、形状的にも色彩的にも、水辺であることをことさらに表現しようとはしておらず、かなり自由に変形して表現している。水らしい部分の描き方も、パステルカラーを思わせるようなファンシーな感じだ。こういうファンシーさはアングルには見られないので、これはルノワールの模索の一つだろう。 このファンシーな色彩は、イタリアで見たフレスコ画から吸収したという説がある。だがルノワールは、このような色彩表現を、続けて追及することはしなかった。 (1885年 カンバスに油彩 92×73㎝ クラーク美術館) |
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