壺齋散人の 美術批評
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曇天のグランド・ジャット島:スーラの点描画





スーラは、南フランスの明るい風景よりも、北フランスの穏やかな光を好んだ。その点では、印象派の次の世代の画家のなかでやや特異な作家だったといってよい。ゴッホやゴーギャンが南仏の強烈な光を前にして鮮やかな色彩に目覚めたのに対して、スーラはノルマンディやイルドフランスの穏やかな光を好んで描いたのである。

「曇天のグランド・ジャット島」と題したこの絵は、セーヌ川沿いの地味な風景を描いたものだ。構図的には、二年前の夏に描いた「ク-ルブヴォアの橋」に似ている。どちらも場所的には似たようなところだ。ただし後者がほとんど正面から景色を見ているのに対して、こちらはやや上から眺め下ろすような視点から描かれている。

色彩は、曇天の風景を描いている割には明るい。グリーンとその補色である赤系の色を巧みに組み合わせ、色の彩度を上げる工夫をしているところは、いかにも色彩理論にこだわったスーラらしい。

画面中程にもやっている船は、遊覧船「ラ・フェリシテ」だという。その左隣にボートのつながれているところが見えるが、これは貸しボートの係留所のようである。セーヌ川にはこうしたボート類が多く遊泳していた。

(1888年 カンバスに油彩 70.0×86.0cm 個人コレクション)




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