壺齋散人の 美術批評 |
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ブルターニュ風景、夏:アンリ・ルソーの世界 |
ブルターニュ地方は、素朴でおおらかな風景が多くの画家を魅してきた。アンリ・ルソーも魅せられた一人らしく、「ブルターニュ風景、夏(Vue de Bretagne, l'été)」という作品を残している。森林の中に開けた牧草地で、家畜に草を食ませている母子をモチーフにしている。 ルソーはこの絵を、実写にもとづいて描いたのではなく、アンジェの美術館にあったベルニエの「パナレクの農家」を下敷きにしている。ベルニエ自身は、当時出回っていた版画をもとに描いたと言うから、絵柄としては凡俗なものと言える。その凡俗な絵柄がルソーの手にかかると、生き生きとしてくるから不思議である。 ベルニエの絵は、かなり明るく開けた牧草地が背景になっているが、この絵の場合、鬱蒼とした森林の中の牧草地がモチーフだ。鬱蒼とした森林は、ルソーのこだわりだったわけで、かれはその森林のイメージを生かしながら、牧場の開放的な気分を盛り込もうとしたわけである。 草を食んでいる白い家畜は、形からすれば牛のようだが、牛にしては随分小さく見える。対象の大きさとか対象相互の比例関係にこだわらないのは、ルソーの大きな特徴である。 (1906年 カンバスに油彩 40×52㎝ 個人蔵) |
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