壺齋散人の美術批評
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クリシー広場の緑の市電:ボナール




パリのクリシー広場は、モンマルトルの西隣にある賑やかな場所である。この広場の活気あふれる眺めを気に入ったボナールは、ここをモチーフに一連の作品を手掛けた。「クリシー広場の緑の市電(Le tramway vert de Place Clichy)と題されたこの作品は、シリーズを代表する一点である。

この絵は、ボナールにしてはめずらしく遠近感がある。それまでのボナールは、伝統的な遠近法をわざと無視して、平板な画面作りをしていたのであったが、この作品では、綿密に計算された遠近法が用いられている。一点消失法に基づいた、立体的な画面になっている。

賑やかな広場の中を、緑色に塗られた路面電車が通りすぎていく。画面左手前には、果物を売る露天商と、それに見入る客が描かれ、その脇を女性たちが通り過ぎていく。一番手前の女性の顔は、輪郭がはっきりとしており、強い存在感を示している。また、路上を駆け回る犬には、ボナールの動物好きの人柄がにじみ出ている。

(1906年 カンバスに油彩 121×150㎝ 個人蔵)



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