壺齋散人の美術批評
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いちごの皿:ボナールの静物画




「いちごの皿(Assiette de fraises)」と題されたこの絵も、ボナール壮年期の静物画を代表する作品の一つ。皿の上に無造作に盛られたいちごの塊をモチーフにしている。構図が単純なだけに、色彩への配慮が行き届いている。

皿を載せている白い背景は、テーブルクロスなのであろう。一見単純な色遣いだが、よくみると、さまざまな色合いが溶け合っているように言える。それら白地に変化をもたらしているのは、苺をはじめ、皿の上に乗っているものの固有色が反映したものである。このように、色彩の相互干渉というのは、画家にとって本質的な着眼点である。白い血を単に白く塗りつぶすのでは、能がない。

パンのかけらやコーヒーカップの一部など、画面に変化をもたらすものを、うるさくない程度に組み合わせて配置している。単純に見えるようで、けっこう手の込んだ配慮がなされているのである。

「1922年 カンバスに油彩 47.0×37.5㎝ 個人蔵) 



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