壺齋散人の美術批評
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窓:ボナールの風景画




ボナールは1912年に、南仏カンヌの郊外「ル・カネ」に家を買い、1947年に死ぬまでそこに住んだ。カンヌ湾から二キロほど奥まったところにあり、遠くに海を一望できた。その美しい眺めをボナールは愛し、たびたびそれをモチーフにした絵を制作した。「窓(Fenêtre)」と題されたこの絵は、ル・カネでの制作の最も早い時期のものである。

窓は閉められており、外側のバルコニーには、内妻のマルトが立っていて、眼下の町を見下ろしている。カンヌの町なのであろう。その町の先には海があるはずだが、それはこの画面には現れない。

室内と外界とは窓で隔てられているのだが、同じ光が、窓の存在を無視するように、輝きわたっている。ボナールのなかの印象派趣味がのぞきみられる作品である。もっともそれをボナールは、淡い光線によって表現しており、コントラストの強さにはこだわっていない。

(1925年 カンバスに油彩 108.5×89.0㎝ ロンドン、テート・ギャラリー)



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