壺齋散人の美術批評
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稽古中の踊り子:ドガの踊り子群像




「稽古中の踊り子(La leçon de danse Madame Cardinal)」と題されるこの絵は、副題からして、画面手前で新聞を読んでいる夫人を強く意識したものだ。この婦人がマダム・カルディナルなのだろう。どんな人物なのかはわからない。このバレー教室の関係者だとも、あるいは踊り子の母親とも言われる。庶民的な服装からして、踊り子の母親である可能性が高い。

それにしては、彼女は自分のことに没頭していて、踊り子たちには全く関心を寄せていないように見える。踊り子のなかに自分の娘がいるとしたら、かなり不自然なことである。

画面左手、部屋の隅のほうでは、三人の踊り子が稽古にはげみ、それを禿げ頭のコーチが指導している。コーチの後ろには、別に二人の踊り子がなにやら仕草のようなものをしている。

踊り子の醸し出す動的な雰囲気と、新聞に没頭する中年女の静的な雰囲気が対照的である。

(1880年 カンバスに油彩 82.2×76.8㎝ フィラデルフィア美術館)



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