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ヒューディブラス、スキミントンと出会う:「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵




サミュエル・バトラーの「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵第七作目は「ヒューディブラス、スキミントンと出会う(Hudibras Encounters the Skimmington)」と題する。スキミントンとは、18世紀のイングランドやスコットランドに広く見られた風習で、主として口うるさい女房や不実な亭主をこらしめるための意味合いを持った儀式である。

この絵では、そのスキミントンの行列にヒューディブラスが出会わすさまを描いている。この行事はそれなりに民衆の宗教意識を反映したものと考えられるが、その宗教意識は古い因習と結びついたもので、ヒューディブラスのようにピューリタン的な心情をもった人間には、反キリスト教的に思えた。じっさい、この絵の中のヒューディブラスは、行列を前にして強い嫌悪感を示している。

画面左手に馬に乗った男女がいるが、この男女が嘲笑の対象というわけだろう。男は女の尻に背を向けて後ろ向きに乗っており、その男を女が柄杓で殴っている。これは「鶏叩き」というのだそうだ。口うるさい女房が亭主を責めたてるというのがその趣旨らしい。

この男女を乗せた馬を、大勢の人々が行列を作って先導していく。行列の中にはさまざまな人々がいる。馬にまたがってこの男女の衣服らしいものを掲げているのは、男女にまつわる性的なことがらを揶揄しているのか。笛を鳴らしているのは、景気づけのためだろう。

左端の建物の窓からは、やはり男女が顔を出しているが、この建物は、看板のロゴから察して仕立屋と思われる。その窓の下には、壁に向かって小便をたれる男が描かれている。この行列騒ぎの猥雑さを象徴する場面であろう。



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