壺齋散人の美術批評
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委員会:「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵




サミュエル・バトラーの著作「ヒューディブラス」へのホガースの挿絵第十点目は「委員会(The Committee)」と題する。委員会とは1648年のプライドのクーデタの後にできた議会のことで、ランプ(尻)議会とも呼ばれる。このクーデタは、ピューリタン革命の転換点となったもので、ピューリタンによる議会の制圧を意味していた。プライド大佐は議会を制圧し、国王への反対を表明しない議員をことごとく追放、わずかに残された60人で議会を構成した。これをランプ議会と呼んだ。ランプ議会は、1953年まで続いた。

ランプ議会はピューリタンの牙城であり、ピューリタン革命の拠点となった。それを反ピューリタンのサミュエル・バトラーが否定的に描くのは自然のことだ。自身反ピューリタンであったホガースも、ヒューディブラスによって代表されるピューリタンを冷笑的に描いた。

場面には委員会の審議の様子が描かれている。いつの時点のことかは、くわしくはわからない。いづれにしても、ピューリタンにとっての必要事を審議しているのであろう。だがそれは、バトラーやホガースにとっては、無用の事態にほかならない。

委員の全員が、扉の近くに立っている男に視線を集中させている。この男が何か重大な知らせをもたらしたようである。もしかしたら、ランプ議会が解散されるという情報かもしれない。ランプ議会は1653年に解散されたのち、1658年に再建されたのであるが、一年ともたないうちに再び解散される。



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