壺齋散人の美術批評
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モル、妾から普通の売春婦になる:ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴」から




ホガースの版画シリーズ「娼婦の遍歴(A Harlot's Progress)」の第三作目は、「モル、妾から普通の売春婦になる(Moll has gone from kept woman to common prostitute)}と題する。ユダヤ人の商人から妾の契約を解除されたモルが、普通の売春婦になった様子を描く。

妾のときの部屋とは対象的な殺風景な部屋の中にモルはいる。唯一の家具であるベッドの上に腰掛け、その傍らには老婆が茶をいれている。この老婆は、モのために客をとったり、日常の世話をしているのであろう。また、モルの腰掛けているベッドは、彼女の商売道具でもある。

彼女の商売を、猫が暗示している。この猫は尻を突き上げるように差し出して、さあどうぞ、というポーズをとっているのだが、それが主人であるモルの商売を暗示しているわけである。

壁には、魔女のかぶるような帽子と、箒がかけられている。これは売春が魔女の仕業だといっているように見える。箒のほうは、マゾの傾向がある客のために役立つだろう。

戸口から入ってきた男たちは客ではない。治安判事が部下をともなって査察にやってきたのだ。だがどういうわけか、治安判事はモルのことよりも、壁にかかった帽子と箒に気を取られている。モルはといえば、胸をはだけて治安判事を挑発している。



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