壺齋散人の美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板



怠惰な徒弟は海から戻り、売春婦と屋根裏にいる:ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰」




ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」の第七作は「怠惰な徒弟は海から戻り、売春婦と屋根裏にいる(The Idle 'Prentice return'd from Sea, & in a Garret with common Prostitute)」と題する。悪党仲間と海で暮らしていたトムは、久しぶりに陸に上がり、とりあえず屋根裏部屋で売春婦と一緒に暮らしている。この絵は、その屋根裏部屋のベッドの上に、売春婦と一緒に横になっているトムを描く。

寒々とした部屋で、家具と言えば、かれらが横たわっているベッドだけ。ベッドはなかば壊れ、床の上は散らかり放題だ。売春婦はなにかに夢中になっているが、おそらくトムにもらった土産を点検しているのだろう。トムのほうは、両手を胸にあてて、なにかに驚いているふうである。

火のついていない暖炉があり、煙突のほうから猫が一匹転落してきた。トムはその猫に驚かされたのかもしれない。ともあれこんな窮屈な場所に潜んでいることは、かれが官憲の眼をおそれているためだと思われる。



HOMEホガース 次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである