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勤勉な徒弟は市議会議員、怠惰な徒弟は共犯者によって弾劾される:ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰」




ホガースの版画シリーズ「勤勉と怠惰(Industry and Idleness)」第十点目は、「勤勉な徒弟は市議会議員、怠惰な徒弟は共犯者によって弾劾される(The Industrious 'Prentice Alderman of London, the Idle one brought before him & Impeach'd by his Accomplice)」と題する。かつて同僚だったフランシスとトムが再会する場面だ。その再会は、市議会議員になったフランシスの前に、トムが引き出されるというものだった。トムは悪事の共犯者から売られたのである。

画面右手の、豪華な椅子に座っているのが市議会議員フランシス。その左手で、両手を組んで懇願しているように見えるのがトム。トムの左手にいるのは共犯者。共犯者は、役人の差し出した聖書に手を置いて、真実を言うと宣誓しているのだろう。その役人の近くには女がいて、役人に賄賂を渡している。

フランシスとトムの合間に見える老婆は、トムの母親で、役人に向かって懇願している。どうか許してほしいといっているようだが、懇願する相手を間違えている。本来懇願を聞くべき立場のフランシスは、かつての同僚を前にして、どうしたらよいかわからず、途方に暮れているように見える。

この絵から伝ってくるのは、当時のロンドンの市議会議員が、犯罪の訴訟ごとを担当していたということだ。



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