壺齋散人の美術批評
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ビール通り:ホガースの風俗版画




ウィリアム・ホガースが1751年に制作した版画「ビール通り(Beer Street)」は、「ジン横町(Gin Lane)」と一対になっている。これは、1750年に制定された法律「焼酎販売法( Sale of Spirits Act 1750)」の宣伝のために作られたものと言われる。焼酎販売法は、外国から輸入されるジンなどのスピリット類が、イギリス人を堕落させているとし、かわって国産ビールを飲むように勧める法律である。その法律の宣伝になぜホガースがかかわったのか。おそらくホガース自身に、外国から輸入される焼酎類に反感があったからと思われる。

ビール通りと題されるこの作品は、大通りでビールを楽しむ人々を描いている。かれらの表情はみな楽しそうであり、身体も健康そのものである。ビールは、飲みすぎると腹が膨れる原因になるが、適度に飲んでいればかえって健康によい。だから、適量のビールを飲んでいれば、人生を楽しく過ごすことができる、といったメッセージを、見るものは感じ取ることができるのではないか。

画面手前中ほどの男女は、魚の行商をしているのであろう。仕事の合間にビールを一杯というわけだ。画面左手には、看板の図柄を描く職人がはしごに乗って仕事をしている。遠景には、屋根の上で何やらやっている連中のすぐそばで、ビール樽を四階までロープで引きあげる男がいる。右手には、小さな窓越しにビールジョッキを受け取る男がいるが、なぜこんな風にしてビールを買っているのか、よくわからない。



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