壺齋散人の 美術批評
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バルコニー:マネ





「バルコニー」と題したこの絵をマネは「アトリエでの昼食」とともに1869年のサロンに出展し、どちらも入選したのだったが、批評家の評判は例によって芳しくなかった。「アトリエでの昼食」は絵の中に銃や兜など奇妙なものが加えられているのが意味不明だと言われ、この絵については、それぞれの人物が不自然な様子に描かれていると言って非難された。

三人のうち前面の女性はベルト・モリゾ。マネは友人のファンタン・ラトゥールを介して彼女と知り合った。彼女もまた画家で、後に印象派グループに属して個性的な絵を描いた。マネは彼女が非常に気に入って、たびたびモデルに使っている。1874年にはマネの弟ウジェーヌと結婚した。

他の二人は、女性音楽家のファニー・クラウスと画家のアントワーヌ・ギュメ。二人ともぎこちないポーズに見える。そこが批評家たちによって不自然に受け取られた主な要因だ。

実際この絵をよく見ると、三人の視線はバラバラの方向を向いているし、ギュメに至っては両手を無意味に動かし、うつろな目を含めて、まるで夢遊病者のようである。

暗い背景にはもう一人の人物が隠れているが、画面があまりに暗いために一見してはその存在がわからない。マネは背景の室内を思い切り暗くすることで、画面全体を平板に見せようとしたように思われる。

(1868年 カンバスに油彩 170×125㎝ パリ、オルセー美術館)




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