壺齋散人の 美術批評
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ショコラ・イデアル:ミュシャの世界




「ショコラ・イデアル」と題したこの作品は、ホット・チョコレートの宣伝用ポスターのために制作されたもの。大量生産・大量消費時代を迎えつつあった当時のフランスにおいては、こうした日常生活に直結した商品のポスターが多く作られた。

若い母親に子供たちがホット・チョコレートをねだっている様子をユーモラスに描く。母親は三人分のカップを乗せたお盆を持ち、その母親の裾に二人の子供たちがすがりついている。早く飲ませてほしいとねだっているのだろう。カップからはホット・チョコレートの湯気がたちのぼり、それが独特のデザインの形を描いている。女性の髪にほどこした遊びの感覚を、ここでも取り入れているわけだ。

「ショコラ・イデアル」とはこのチョコレートの商品名なのだろう。それを画面上段に大きく表示し、その下に「可溶性粉末」と書いている。要するにインスタント食品なのである。また、画面下部には、「おかあちゃん、早くおくれ」と書いて、子供たちのはやる心を表現している。

こんなポスターを見せられたら、子供ならずとも、飲んでみたくなるだろう。

(1897年 紙にリトグラフ 117×78㎝)


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