壺齋散人の 美術批評
HOME ブログ本館 | 東京を描く 水彩画 日本の美術 プロフィール 掲示板


時の流れ:ミュシャの世界




「時の流れ」と題したこの装飾パネル・セットは、一日の時の流れを、朝、昼、夕、夜の四つに区分し、それぞれ女性のしぐさに時々の自然を感じさせるように描かれている。ミュシャ得意の女性に擬人化された自然の表現である。

これ以前のミュシャの絵の中の女性たちはみな、画面の前景に浮かび上がるように描かれていたが、このシリーズでは、前景に人工的な枠組みを置き、その後ろに女性をおさめるような形に描いている。どの絵も、その時間帯にふさわしい雰囲気を醸し出している。

上の絵は、「朝の目覚め」。眠りから目覚めたばかりの女性が、すがすがしい自然の中でのびのびと一日の始まりにそなえている雰囲気が伝わってくる。



これは、「昼の輝き」。明るく輝く日の光の中で、女性がはつらつと動き回っている。このほか、「夕べの夢想」、「夜の安らぎ」と続く。どの絵も、綿密な描写をうかがわせる一方、色彩は抑え気味である。

(1899年 紙にリトグラフ 各107.7×39.0㎝)


HOME ミュシャ次へ









作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2011-2021
このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである